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プレート内大陸-海洋境界部でのマグマ発生メカニズムを解明:マントルプルームなしのプレート内火山形成モデル


<現状>

ホットスポット火山と呼ばれる、プレート内で活動する火山は、一般的にマントルプルームの活動に起因すると考えられています。特にハワイ火山群のように、火山列を形成し、火山噴火年代が地理的に連続性をもつホットスポット火山は、移動するプレート下に存在する、マントルプルームの存在を示唆する重要な証拠と解釈されています。

大西洋東部からアフリカ西部沿岸地域には、多くのホットスポット火山列(カメルーン火山列、カナリア諸島、カーボベルデ諸島、アトラス山脈付近など、以下「東部大西洋-西アフリカ火山群」と呼ぶ、付図1参照)が存在します。これらの火山の起源については、マントルプルームの活動に起因するとの考え方が一般的です。一方で、プレートの移動速度と噴火年代の関係から、これらのホットスポット火山の起源が、ハワイのようなマントルプルーム説では説明できないことが問題とされてきました。

図1: ゴンドワナ大陸分裂時のリフト(拡大)帯と東部大西洋-西アフリカ火山群火山の位置。灰色部は約1.2~1.8億年前のゴンドワナ大陸分裂時のリフト帯。現在の火山の位置を、アフリカ大陸海岸線からの距離で示した(赤色)。矢印はリフトの拡大方向。

<研究成果の内容>

本研究グループは、アフリカ西部ギニア湾内のカメルーン火山列の火山岩について、化学組成と放射性同位体組成を分析しました。データを解析した結果、カメルーン火山列のみならず、東部大西洋-西アフリカ火山群を形成したマグマは、主にアフリカ大陸の地下深くにあるリソスフェリックマントルが融解することによって形成されたことが分かりました。さらに、現在の東部大西洋-西アフリカ火山群の位置は、ゴンドワナ大陸分裂時の拡大軸上に分布することが分かりました(図1)。地震波トモグラフィーによるマントルの3次元内部構造から、東部大西洋-西アフリカ火山群の地下には、アフリカ大陸の縁辺部や、大陸分裂時に砕けたゴンドワナ大陸の破片が広く分布していることが分かっています。このような場所では、リソスフェアの厚さが変化することによって、アセノスフェアの内部で密度不均質が生じ、小規模な対流が発生します(付図2)。すなわち、東部大西洋-西アフリカ火山群が火山列を形成するのは、アフリカ大陸縁のリソスフェアの形状によるもので、ハワイのような、固定したマントルプルーム上を移動するプレート活動によるものではないことが分かりました。

<社会的な意義>

世界の火山は、プレート拡大(中央海嶺)、プレート収束(沈み込み帯)、または、プレート内マントルプルーム活動により形成されたと考えられています。本研究では、プレート内大陸-海洋境界であるパッシブマージンが、第4の火山形成場であることを示しました。本研究成果に基づき、他のパッシブマージン地域の火山の成因についても再検討し、プレート拡大場、プレート収束場、マントルプルーム活動場に次ぐ第4の火山生成場として、地球進化におけるパッシブマージンの重要性をさらに一般化する必要があります。

図2: パッシブマージンにおけるマグマ発生模式図。(a)約2億年前に開始したゴンドワナ大陸の分裂 (b)現在の大西洋-アフリカ大陸境界部。

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